弧月独言

ここは私の深呼吸の場である。日々の雑感や好きな歴史のこと、旅に出れば紀行などを記したい。

皇位継承一応天門炎上一

日本人は貴種流離譚が大好きである。貴種流離譚は折口信夫が提唱したが、大まかな概念は高貴な身分に生まれながらも時勢が味方せずに虚しく下野したり、敵の陰謀に嵌り低い身分となったりして彷徨い、もがき、その後華々しく復活する物語の事である。源氏物…

ほとけのみち 建長寺

春先、花所望の茶会へ参席するべく数年ぶりに鎌倉を訪ねた。東京から鎌倉は近い。以前はよく歩いたものだ。江ノ島近くの片瀬に住んでいたこともあり、当時は毎週末鎌倉の寺社巡りをした。近頃は関西にばかり脚が向いて鎌倉は素通りであったが、歩いてみれば…

皇位継承一承和の変一

藤原氏の起源を改めて振り返ってみたい。藤原氏は天皇家に次ぐ高貴な一族であるが、その出自はイマイチはっきりしない。日本書紀の神代上にある天の岩屋戸の神話で、天照大御神を岩屋から引っ張り出す策を練る一人に名を連ねて活躍する天児屋命は、中臣氏の…

西国巡礼 第四番 槙尾山

寺名は施福寺と云うが、槇尾山とか槇尾寺とも通称される。西国巡礼屈指の難所で、麓から本堂までは、胸突き八丁の山道を小一時間かけて登らねばならない。槙尾山の標高は六百メートルほどで、施福寺はおよそ五百メートルのところに在る。山としては大した高…

麒麟を待つか、麒麟を呼ぶか

今年の大河ドラマのタイトル『麒麟がくる』は秀逸である。麒麟とは中国の神話に登場する伝説上の霊獣で、全体は鹿のようで、牛のような尾と、馬のような蹄を持ち、頭の上に角が一本、体毛は五色に輝いているそうで、理想的な政治が実現した時にのみ現れると…

暗夜

春爛漫、空には煌々たる下弦の月が昇ってくるだろう。だが地上は新型コロナウィルスが包む闇の中。暗中模索と云う四字をこれほどに実感したことはない。この四十年あまりで世界は大胆にグローバル化した。その詳細はわざわざ述べるまでもないが、今の世界情…

皇位継承一賜姓降下一

嵯峨天皇は薬子の変(平城太上天皇の変)で揺らぐ朝廷の引き締めを図り、天皇の権威を高めるべく動いた。首謀者の薬子は自害し、兄の藤原仲成は射殺されたが、事件に与した他の者には寛大な処置をとって、ノーサイドとするよう努められた。出家し恭順する平…

西国巡礼記 第三番 粉河寺

大和と河内の国境になだらかにどっしりと横たわる葛城金剛の峰々。巡礼バスの車中から、折しも夕陽に照り映えたこの雄大な山塊を飽かずに眺めた。なんとも神秘的な印象で、上古より神山と崇められたと云うわけが、ここへ来ればはっきりする。私は河内の南側…

皇位継承一二所朝廷一

桓武天皇の二大政策は平安京造営と、蝦夷討伐であるが、どちらも道半ばのまま崩御された。この当時では無類である七十歳で大往生。歴代天皇でも長命のほうである。桓武天皇の行った二大政策は、民に重い労役と課税を敷いており、国家は疲弊しつつあった。桓…

西国巡礼記 第二番 紀三井寺

若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴鳴き渡る 山部赤人の万葉歌である。赤人といえば、 田子ノ浦ゆうち出でてみれば真白にぞ不尽の高嶺に雪は降りける が有名だが、若の浦〜も代表歌の一首である。鶴が鳴き渡ると云うのも、初春を寿ぐ様な調べで、暖…

皇位継承一平安遷都一

平安時代は途方もなく長い。厳密にいえば、桓武帝が長岡京から平安京へと遷都したのが延暦十三年(794)のことで、平家が滅亡した元暦二年(1185)までの三百九十一年間が平安時代である。人類誕生から旧石器、新石器、縄文、弥生時代を除けば、神代から日本…

西国巡礼記 第一番 青岸渡寺

西国巡礼は日本最古の巡礼と云われる。その発足の起源は諸説あるが、もっとも流布されてきたのが徳道上人の伝承であろう。大和の長谷寺を開いた徳道上人は養老二年(718)病を得て死んだが、冥府で閻魔大王に、「汝は諸人を救うべく本土へ還り、三十三箇所の…

皇位継承一桓武帝誕生と長岡京一

天皇を時に帝と敬称する。帝を日本語ではミカド或いはテイと読む。極めて皇帝的な敬称であり、中国の多大な影響を受けてきた日本人の言葉の模索は、天皇と云う存在の敬称からも察することができる。帝をミカドと読むようになったのは、平安中頃から始まる脱…

青春譜〜野庭高校の灯〜

野庭高校をご存知であろうか。今は近隣の横浜日野高校と統合して、神奈川県立横浜南陵高等学校となっているため、野庭高の名は忘れられつつあるが、かつて野庭高は吹奏楽の名門校として、吹奏楽関係者やファンには有名であった。そして今は野庭高吹奏楽部は…

熊野三山巡拝記

熊野の名は山の奥深い国と云う意の「隈の処」に由来すると云われる。熊野は遠い。今でも東京からは一日がかりである。長年行きたかった場所。しかしなかなか機会が来なかった。というよりも機会を作れずにいた。私に時間と金が有ればすぐさま行くが、熊野行…

皇位継承一皇統回帰一

石ばしる垂水の上のさわらびの 萌え出づる春になりにけるかも これほど早春の風景を詠み当てた歌はない。また同時に躍動感と歓びに溢れる歌で、じわりじわりと訪れる春の気配、そしていずれダイナミックに展開するであろう春への期待も込められている。清冽…

青春譜〜花輪高校のモルダウ〜

令和元年の全日本吹奏楽コンクールが終わった。先月触れた淀川工科高等学校は、32度目の金賞に輝いた。今年は課題曲Ⅱ「マーチエイプリル・リーフ」、自由曲がラヴェル作曲のバレエ音楽「ダフニスとクロエ第二組曲より夜明け〜全員の踊り」あった。私は後か…

客あしらい

ウィーンフィルハーモニー管弦楽団が来日ツアー中である。私は東京公演の希望日のチケットが取れずに今回はあきらめていたが、サントリーホールメンバーズクラブから、公開リハーサルのお誘いがあり、申し込んだら運良く当選した。リハーサルでも何でもウィ…

皇位継承一大嘗祭一

明治四十二年に制定された「登極令」は、皇位継承儀礼を大きく四つに分けて定めている。践祚の儀、即位の礼、大嘗祭、改元である。皇嗣すなわちヒツギノミコが皇位を継承することを、古い言葉で「天つ日嗣をしろしめす」と云った。天照大御神を皇祖神として…

青春譜〜キング淀工〜

令和元年の全日本吹奏楽コンクールがやってきた。昨日十月十九日が中学校の部、本日十月二十日が高等学校の部である。名古屋センチュリーホールは今年も緊張の戦場であり、涙と笑顔が溢れる熱き歓喜の場となる。此処が青春真っ盛り、一世一代かも知れない。…

なおすけの古寺巡礼 黒石寺

今夏、平泉を訪ねた折、以前から気になっていた古刹を訪れる機会を得た。奥州市水沢にある黒石寺である。仏国土平泉のあたりには名刹古刹が多いが、中でも群を抜いて古いのが黒石寺で、天平元年(729)行基による開山とか。中尊寺よりも三百年も昔で、みちの…

皇位継承一即位礼一

いよいよ来たる令和元年十月二十二日今上陛下の即位礼正殿の儀が行われ、十一月十四日から十五日には大嘗祭が行われる。しばし皇統史から離れて、今月と来月は即位礼と大嘗祭について少しばかり触れたい。 天皇の代があらたまると、御代の始めに「皇位に即く…

青春譜〜マーチング〜

吹奏楽コンクールは合奏して演奏技術やハーモニーを競うが、マーチングコンテストは演奏しながら動き、隊列を組んでパレードし、ダンスし、演技する。全日本マーチングコンテストは、今年で三十二回目で、吹奏楽コンクールよりはずっと新しい大会だ。全日本…

なおすけの古寺巡礼 仏国土平泉

「みちのく」と云う響きは、いつの世も旅人達の旅情を誘う。かく言う私もその一人で、みちのくの歴史に興味を抱き、西行や芭蕉に憧れて、少しずつ東北を旅している。東北の中心が仙台ならば、みちのくの核心は平泉であると私は思う。地理的に奥州のど真ん中…

皇位継承一南都斜陽一

大仏開眼供養と鑑真和上による大授戒を見届けると、思い残すことはないように聖武上皇は崩御された。後を継ぎし孝謙女帝が頼りとしたのは、母の光明皇太后と、皇太后の甥の藤原仲麻呂である。頼りとしたというよりも、誰よりも敬い、誰よりも恐れた母の光明…

青春譜〜青春の時~

夏の甲子園、明日はいよいよ決勝。甲子園では各校の応援合戦も見もののひとつ。大応援団の花はやはりブラスバンドで、最近は特集番組が組まれたりするほど、広く認知され注目されている。習志野、愛工大名電、龍谷大平安などの実力ある吹奏楽部が質の高い爆…

祖父の従軍のこと

私の祖父は、父方も母方も対中戦に従軍した。父方の祖父は二十年近く前、母方の祖父は十年ほど前に亡くなったから、今となっては定かでないのだが、私が幼い頃に左様聞いた記憶がある。父や母は祖父の軍歴についてはほとんど知らない。聞いてもよくわからな…

皇位継承一大仏開眼一

最強の持統女帝時代に盤石となっていた大和朝廷は、女帝亡き後再び混沌とし始めた。後を継いだのは文武天皇。先に述べたとおり、即位当初は持統上皇が実質的に執政したが、文武天皇在位中に大宝律令が完成し、遣唐使も三十三年ぶりに派遣され、薩南諸島を制…

青春譜~パーカッションと弦バス~

およそ人間が使う楽器の中で、最古のモノは打楽器に違いない。いわゆる太鼓の類いである。打ち鳴らすと云う言葉からも楽器とはまず打楽器であることがわかる。テクニカルなスキルは後回しにして、音を出す或いは鳴らすと云うことにおいては、これほど容易な…

ほとけのみち 高田本山

日本仏教の本山を巡礼するこのシリーズは久しぶりである。まあ、私の人生と同じく気の向くままに訪ねている。先日、伊勢神宮参拝して、その夜は津市に泊まり、翌朝、一身田にある専修寺を訪ねた。専修寺は浄土真宗高田派の本山で、通称高田本山と呼ばれてい…