弧月独言

ここは私の深呼吸の場である。日々の雑感や好きな歴史のこと、旅に出れば紀行などを記したい。

風になる時

世界が注視するアメリカの大統領選挙はかつてない激戦であった。現時点で、民主党のバイデン前副大統領が当確となって、政権移行チームが発足し、世界の首脳もバイデン氏に祝意を伝えてはいるが、トランプ大統領は敗北を認めておらず、未だ大統領選挙は終わっていないという。アメリカ大統領選挙は慣例として、敗者が敗北宣言をし、そのあと勝者が勝利宣言をする。トランプ陣営は選挙で不正があったと一歩も引くつもりはなく、このまま敗北宣言はせずに法廷闘争になる可能性が高い。コロナ禍で行われた大統領選挙は郵便投票が多数を占めた。そこに不正があったと指摘するトランプ氏。これな本当であれば民主主義の根幹を揺るがす事であるが、不正がなかった場合は、逆に民主的な選挙を否定することになる。冷戦後、唯一の超大国として君臨したアメリカは、十九年前の同時多発テロ以降翳りを見せていた。四年前にアメリカファーストと叫び、強いアメリカを取り戻すと豪語した大統領を頂いたが、あまりに極端な保護主義が先行して、国際社会から孤立しつつあった。アメリカ国民は振り子を戻すべくバイデン氏を選んだとは思う。しかしバイデン氏になっても、これほど分断されたアメリカが容易に挙国一致できるとは思えない。これからさらなる混迷の時代が、今、始まったと言わざるを得ない。この間アメリカと経済摩擦を起こし敵対してきた中国が、いよいよ一番の超大国へ変わる日が来るのかも知れないし、沈黙のロシアだってどう出てくるかわからない。欧州もイギリスがEUを離脱して、足並みは揃ってはいないし、コロナの猛威は欧州でも凄まじく、影響力低下は避けられそうもない。これまで地球を支配してきた北半球はあまりに混沌としているのだ。

日本でも歴代最長だった安倍内閣が終わり、菅内閣に変わった。アメリカのように政権交代したわけでもなく、管氏は安倍内閣の継承を謳って総理になった。そもそも日本では政権交代は難しい。戦後、五十五年体制となってから、二度政権交代があったが、いずれも短命で、国民の支持はあっという間に離れている。日本人は長期的安定を好む民族であることは歴史が示している。急激な変化は避けたいがため革命は起こらない。明治維新と昭和の戦後だけは異例であるが、政治体制や経済体制は変わっても天皇制は維持されている。日本人は伝統を重じる。伝統芸能がこれほど多くある国もないだろう。 コロナ禍 今年、新型コロナウィルスはすべての人にとって災禍となった。秋が深まり寒さが増す北半球では日本を含めて、感染者が急増、第三波がやってきた感じだ。コロナはアメリカが提唱してきた民主主義と資本主義経済に打撃を与え、人との距離は広がり、私たちの社会生活は大きく変わった。東京オリンピックは一年延期になったが、果たして開催できるのか。今私たちは数十年どころか、数百年に一度の大変革期に遭遇しているのである。ワクチンや治療薬もまもなくできそうで、少しずつ光射す出口が見えてはいるが、現時点では手探りであることは否めない。ゆえにこれまでと同じ暮らしはできないと各々が心得ねばならない。

占星術では、今年12月22日から、風の時代になると云われる。218年続いた地の時代が終わり、これからおよそ240年ほどは風の時代になるのだそうだ。占星術では、火、地、風、水、この四つのエレメントに分けて、それぞれ周期があるとされ、その節目をグレートコンジャンクションと云うそうだ。グレートコンジャンクションはだいたい二十年周期でやってくるがひとつのエレメントは概ね百年五十年から二百年ほど続く。つまり地のエレメントが二十年ごとに更新されているイメージ。ゆえに次は風のエレメントが二十年周期で更新されてゆく。ところが合間に数年から数十年単位で別のエレメントに変わる時代があったりもする。例えば、現在の地の時代は江戸時代後期の1802年に始まるが、途中1821年から火のエレメントが強くなり、1842年に再び地のエレメントに戻って、今度は1981年から風のエレメントが強くなって、その後2000年から2020年末まで地のエレメントに戻っている。1821年から1842年は、ギリシャオスマン帝国から独立し、これを皮切りに各地でスペインやポルトガルの植民地が独立、フランスでは七月革命があった。日本は徳川十一代将軍家斉の大御所時代で、江戸町人文化の爛熟期であったが、天保の大飢饉が起こり、大塩平八郎の乱が勃発、いわば徳川時代の終幕の始まりが背景として次々にあった。幕末はもうすぐそこと云う時代である。1981年から2000年は20世紀末で、世界では冷戦が終結したが、各地では現代まで尾を引く小競り合いの紛争やテロが多発するようになった。日本は昭和から平成に変わり、バブル期からバブル崩壊があった。次の風の時代も折々で別のエレメントが入ることもあるのだろう。風の時代とはどんな時代なのか。前回の風の時代は鎌倉から室町前半まであったと云う。源平の争乱を経て武家政権が確立された。鎌倉新仏教と云う仏教変革が起こり、喫茶の文化が始まり、猿楽など現代私たちが享受している伝統文化や芸能もこの時代に萌芽した。果たして四年、四十年はどうなるのか。私は星占いはよくわからないが、妙な勘が働くことがたまにある。この冬、間違いなく時代が大きく変わるであろう。私たちは今その大転換点にいるのだ。そんな気がしてならない晩秋である。