弧月独言

ここは私の深呼吸の場である。日々の雑感や好きな歴史のこと、旅に出れば紀行などを記したい。

2016-01-01から1年間の記事一覧

泰然自若

私の座右の銘。長年探してきたが、この歳になり、この度ようやく感得した。泰然自若。この言葉が、私には最もしっくり来る。そこにはいつもこう在りたいと、切なる願いも込められている。 世の中まことに忙しない。私もいつも忙しない。仕事、家族、人間関係…

日本仏教見聞録  中山法華経寺

身延山へお詣りして、日蓮聖人と日蓮宗に関心を抱いた私とT君は、千葉県市川市にある中山法華経寺へ向かった。京成線の中山駅で降りるとすぐに表参道に入る。静かな門前町を抜けると「正中山」と山号を掲げる立派な山門が現れる。山門の左脇には、例によっ…

元禄レクイエム

私が歴史に興味を持つことになったきっかけのひとつが、元禄赤穂事件である。浅野内匠頭が、吉良上野介にどのような遺恨があって刃傷に及んだのか、真相は闇の中であるが、この事件は三百十四年を経た今日でも様々な説が飛び交い、日本人の心を捉えて離さな…

悪魔のトリル

晩秋の夜、紀尾井ホールに再び三浦文彰君のヴァイオリンを聴きに行く。プログラムはクライスラー、ドヴォルザーク、真田丸の組曲、ラヴェル、サラサーテなど至福の二時間であった。此度は、ソロリサイタルで伴奏はピアノのみ。じっくりと彼のヴァイオリンを…

日本仏教見聞録 身延山

秋深まりし十月下旬、T君の運転で身延山に向かった。東京から西へ向かう中央道は、私が好きな道のひとつ。日本の屋根に向かってぐんぐん進む。迫る山並みは私好みの旅情に駆られる。「中央フリーウェイ」の歌詞そのままに、調布飛行場、府中競馬場、ビール…

面授これもまた一会と心得よ

この秋から私は茶の湯の稽古を始めた。六十ならぬ四十の手習いである。これは大きな決断であった。長年、井伊直弼をはじめとした大名茶人と茶道に強い関心を寄せてきたので、歴史探訪をする折や文章を書くときは付かず離れずであったが、自分が稽古をすると…

THE WEST WING

いよいよアメリカ大統領選挙の日がやってくる。オリンピックイヤーは私にとって、このアメリカ大統領選挙もまた、とても関心を抱くニュースなのだが、今年ほどいろいろな意味に於いて不思議な大統領選挙もかつてなかった。まさに泥仕合の様相を呈しており、…

輩考

日本シリーズは日ハムが四連勝して十年ぶりの日本一になった。今年のプロ野球は例年以上に面白かった。各球団大物ルーキーがいて、若手の躍進もあり見応えがあった。ことに大谷翔平選手は輝いていた。今年彼は、一段も二段も三段も大きく飛躍したと思う。こ…

日本仏教見聞録 總持寺

これまで日本各地の寺を訪ねてきた。私は初めて訪れる土地に行く前は、仕事であっても、遊びであっても、必ずその土地の地図を見る癖がある。土地の歴史や史跡、寺社を調べて、時間が許せばちょっと訪ねてみようと地図を広げる。思えば私は地図を見ることは…

文学VS音楽

今年のノーベル文学賞にボブディランが選ばれた。正直驚いたが、ノーベル委員会もなかなか粋なことをするなとも思う。文学賞は世界中に数多くあるが、ノーベル文学賞はもともと少し異色な気がする。そして今回のボブディランの受賞。さもありなん、世界的権…

沙汰の限り

言語道断。呆れ返っている。豊洲市場の問題だ。よくもまあ、ここまでいい加減にやってきたものだ。東京都は財政も黒字で、日本の中にあって違う世界に映る。何もかも一人勝ちの独り歩き。だが、勝って、勝って、勝ちまくっても、東京は兜の緒を締めなかった…

日本仏教見聞録 川崎大師

仏教が誕生して二千有余年。あと数十年すると日本へ仏教が伝来して千五百年を迎える。日本人は仏教から多くのモノを得てきた。信仰、経典、美術、音楽、文学。四方の海に囲まれた敷島に、仏教は大陸の文化を運んできた風であった。その風は時に嵐の如く荒々…

赤坂離宮

残暑の中この連休は元赤坂の赤坂離宮に行ってきた。思えば中学一年の終わり頃、始めてこの場所を訪れた。二月の寒い夜、正門前に立って、日本にもこんな素晴らしい宮殿があるのかと驚き、心惹かれてから二十七年。ようやく積年の想いが叶って、その内部へ足…

天賦の奏に解かされて

今日は早くも重陽。残暑厳しい日が続いているが、夜もすがら虫たちの涼やかな合奏を聴いていると、近くに秋を感じてうれしく思う。この夏、紀尾井ホールで三浦文彰君のヴァイオリンを聴いた。若くして溢れる才能を滾らせた、実に堂々たる彼のヴァイオリンを…

観音の里

近江にはずっと強い憧憬がある。歴史に想いを馳せるとき、私の心はいつも近江に向かう。古代より近江を制する者が天下人となった。近江宮を造った天智天皇も、それを廃都に追い込んだ弟の天武天皇も転機は近江の地であった。信長や秀吉は近江から天下取りの…

ターニングポイント

未来の人々に、平成という時代はどんなふうな印象を与えるのだろう。今私達の生きる平成時代は、ITから派生した第三、第四の産業革命があり、世界大戦ではないが方々で終わりなき小競り合いを繰り返し、ある程度まで国家が成熟すると環境とか個々の精神とか…

ばあちゃんの玉音放送

時の流れは早い。だが時間はいつの世も誰にでも平等であるはずで、早いか遅いかを感じるのは時代、年令、環境などで大きく変わることは間違いないだろう。戦時中は特に時間が長かったのではあるまいか。私は戦争を知らぬ世代であるがそんな気がしてならない…

生き存えるということ

熊本地震から四ヶ月。ようやく最後の行方不明者の学生さんが帰ってきた。この四ヶ月間のご家族のことを考えると如何許りかと言葉もない。時は止まったまま、色も匂いも味もない世界ではなかったか。御冥福を祈り合掌。 五輪や甲子園に沸きかえる夏。一方で日…

心の虫干し

立秋が過ぎた。連日五輪観戦で寝不足だが、さっそく競泳の王者の凄みのあるレースや体操男子団体の執念を目の当たりにして、心から感動する。感動することは人間の感情の筆頭とも言えるであろうか。感動すること、すなわち心を揺さぶられるという経験は、実…